
31/05/2025
新刊書紹介
経験主義者デカルト
著者:田村 歩
A5版、並製本、140頁
978-4-909933-87-4 C3010
西洋近世哲学は従来、合理主義と経験主義とに大別され、近世哲学の父として名高いデカルトは前者に分類される。しかしこの分類から生ずるイメージに反して、デカルトは自身の形而上学において「経験」という手法を多用している。しかも、アリストテレス以降の哲学者たちにとって経験とは一般的に感覚ないし記憶から生じるものであったが、デカルトはこの伝統的な用法とは明らかに異なる仕方で用いているのである。本書は、デカルト哲学の長い研究史において主題的に論じられることの稀であったデカルト的「経験」概念がもつ機能や意義について、キケロやセクストスといった古代哲学、そしてドゥンス・スコトゥスやフォンセカといった中世哲学にも目配りしつつ明らかにしていく。そして本書が提示する諸解釈が正しければ、デカルト形而上学は合理主義には収まりきらない。彼が合理主義者であったことは否定されないが、同時に経験主義者でもある。タイトルを『経験主義者デカルト』としたゆえんである 。
凡例
まえがき
序論
第一部 デカルトの形而上学体系における「経験」の機能
第Ⅰ章 基礎的作業
第Ⅱ章 直観・知解・経験
第Ⅲ章 近世的「意識」概念の萌芽としての「経験」
第二部 デカルト自我論・自由意志論と「経験」
第Ⅳ章 「私は思惟する」という経験
第Ⅴ章 「私は存在する」という経験
第Ⅵ章 「意志的であることと自由であることは同一である」という経験
結語
文献一覧
人名索引
著者紹介