
07/10/2024
原産名はフランス語で「エパニュール・ブルトン(Epagneul Breton)」です。また「フランス・ブルトン」と呼ぶ方もいます。全猟では英語名である「ブリタニー・スパニエル」を犬種正式名称としています。フランスのブルターニュ地方が原産とされる小柄な猟犬に様々な血が加え改良され、スパニエル種には希な高いポイント能力を持つ魅力的な鳥猟犬です。小ぶりでお洒落なフランス車のような鳥猟犬「ブリタニー・スパニエル」、全猟のアーカイブ「鳥猟犬質疑応答室」をぜひご訪問下さい。
☆ ブリタニー・スパニエルについて
【質問】 私は猟歴15年で、秋田県の田舎町に住む日曜ハンターです。私の住まいはあまり広くないので小型のブリタニー・スパニエル(以下ブリタニー)を飼いたいと思っています。ただ、ブリタニーは個体によってその猟能に違いがあるという話ですので、どんな系統の犬が良いのか、また、その歴史や特質なども教えてください。
【回答】 ブリタニーには主に以下のような3つの特徴があります。
①ポイント能が高度に発達している唯一のスパニエル。
②外貌と動作がややセターに似ています。
③尾がない状態で生まれるものが多く、標準の尾は4インチより長からずまた全然尾がないものとされています。
ブリタニーはヨーロッバ大陸では古くから人気があって系統づけられていますが、アメリカには1934年から36年の間にルイス・ゼバウド氏らによって初めて輸入されたものです。アメリカでのブリタニーの歴史は浅いのですが、猟野でかなり有能な活躍をしたので、その関心も高くなってきました。したがって、ブリタニーの進歩改良には目覚ましいものがあります。特にフィールド・トライアルでの活躍は著しいものがあり、オープン・シューティング・トライアルでは英ポインターや英セターと争って優勝を獲得していました。
ブリタニーは、他のスパニエルと同じようにその始祖犬はスペインに源を発しています。一説には今日のアイリッシュ・セターの基礎となった赤白のセターと深い関係があるともいわれています。例えば、15世紀の前半にアイルランドの勇士たちがフランスの一部に浸入した際にセターが一緒に持ち込まれた可能性があります。
ただ、フランスのドウーロソの谷のポントという小さな町が、尾のない犬の祖先の誕生地であるといわれています。イギリス人がヤマシギ猟のためにこの町に連れて来た白とレモンの牡を土着の赤白の牝と交配したものから2頭の尾のない優秀な犬が生まれ、これが子孫に遺伝したともいわれています。
フランスの有名なブリーダーのアーサー・エノー氏は、ブリタニーの初期の発展に大きな貢献をした人で、白オレンジ斑の固定を可能にし、またイタリアン・ブラッコとブラック・ド・ブルボンネという2種のポインターと異種交配を行い、この種の嗅覚能力を増強することに成功しました。その後、異種交配の欠点が現れましたが、次第に改良され今日の犬となったわけです。
ブリタニーは、徒歩で猟をする者には理想的な伴侶であるといわれ、ボインターやセターほど捜索範囲は広くはありませんが、好んで密な叢林を捜索し、猟者との連絡も極めて良いといわれています。ブリタニーは小型で扱いやすく、猟野では敏活な活動力を持っていますが、極めで敏感な犬で粗雑な扱いに注意しなくてはなりません。(掲載1983年)
■鳥猟犬質疑応答室について■
機関誌「全猟」の発行を1936年(昭和11年)7月から今日まで継続しています。本稿の原文は、田島英雄先生が1981年1月号から1993年7月号まで、寄せられた質問に答える形で同誌に掲載されたものです。
鳥猟犬を中心に、分かりやすく詳細に答えられています。基本的なノウハウは時代を越える内容ですので、ご一読いただければ幸いです。
[編集部注]記事の中での旧漢字や旧仮名遣いや現行法令に相違している内容については、一部読みやすいように修正・加筆しています。
#全猟