16/07/2022
“恵まれた星”の宿命を生かし欧米感覚の住宅作りに勃頭
米国帰りの兄妹が設計デザインした高級コンドが話題に
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Zin Lae Yee Phyo ジン・ラエ・イー・ピョー
davana Residence : Managing Director
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ミャンマーのローカル住宅のひどさにはあきれていたが、米国で欧米風のライフスタイルに浸り、検知器、デザインそして合理的なビジネスを学んで帰緬した若き兄妹がモダンな高級コンドを誕生させた。それは彼らの作品のようでもあった。
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❖資金は親会社が出したが
ヤンゴン西部のAhlone地区は、旧行政機能や各国公館他富裕層の邸宅などが立ち並ぶ高級エリアである。しかも北部に広大な緑豊かな人民公園が隣接するまさに理想的な環境である。
今回紹介するZin Laeさんは、このAhlone地区の閑静な一角に誕生した高級賃貸コンドミニアム「davana Residence」の最高責任者のおひとりだった。厳密に言うと、2歳年上の兄との共同オーナー経営だが、それにしてもまだ24歳の若さである。
この歳でオーナーと聞くと、こうした一等地に建てる資金はどうしたのか、という疑問がまず湧く。失礼ながらこの若い兄妹に、そんな大きな資金があるとも思えない。そこでそのあたりを突っ込むと、「実は資金は父の会社のOpal Construction.,Ltdが出してくれました。私たちは設計、デザイン、内装などのコンセプトを考え、販売の方法もSNSを使ったり、色々考えました」
母体となる2005年創業の父親の会社は、橋桁工事、道路の敷設、地盤沈下の修正工事、その他の土木工事(発根工事、型枠工事など)などの公共工事のほか,外装、鉄筋工事や住宅基礎工事などの建設工事も手掛けてきた。しかし、2018年の「davanaResidence」のスタートともに、コロナ禍などの問題もあり、同年に解散している。だから父は自分ができなかった高級コンド建築の夢を、この若い兄妹に托したのかもしれない。
❖外国人居住者を意識した合理的な設備
なるほどそういうことだったのか、と頷いていると同席していた兄のThant Shan Htun氏が、補足するように説明を始めた。
「これまで、ミャンマーの古い建物は問題が多々ありました。手抜き工事も少なくなかったようです。そこで私たちは考えました。まず採光です。開口部をガラス張りにし、できるだけワイドにとるようにしました。これで室内はかなり明るくなり、床も場所によっては大理石仕様にしました。」
すると妹がさらに自信たっぷりに「家具や調度品もすべて手作りのオリジナルなんですよ。間取りに合わせたサイズや使いやすさと美しさを大切にしたかったからです。一部家具にはミャンマーのオーク材を使いました」
なるほどと、私は再び感心した。私もこの国に初めて来て定住し始めた始めた頃から3年くらいは、住むところで苦労した経験がある。特に排水などの水関係や電気系統の不備や不具合が多かった。ある時、中華街に近い便利な場所に3部屋あるアパート借りたが、入居して1週間でエアコンから水が吹き出し、大屋に電話したら、入居後はすべて居住者の責任と最後まで突っ張ねられた苦い思いでがある。安い家賃につられてローカルの古いアパートに飛びついて失敗したことが何度かあった。
だからこの国のローカル住宅は余り信用していなかった。見た目の美しさは大事だが、我々外国人にとっては、水回りやコンセントの位置や数など、見えないところは大丈夫かと心配になると告げたら、
「おっしゃる通りです。その点は私たちも注意していた部分です。排水、電気など細かいところまで気を配っていますよ」とZinLaeさんが間髪を入れずに言った。
この時、今まで余り気にも留めなかった彼女の英語力の素晴らしさに気づいた。
「米国の大学に留学してましたから」。私が流暢な英語を褒めると、彼女はそう言って少しはにかんだ。
❖アメリカンナイズされた新感覚の設計
なるほどと、私はこの日3度も頷いた。ビルマ訛りが抜け、聞き取りやすいアメリカン・イングリッシュは、この国では聞く機会が少ないので、とても新鮮に感じた。
彼女はヤンゴンのインターナショナルスクールで高校を終えると、2013年に渡米した。留学先は米国南部フロリダのマイアミ大学であった。ここでビジネススクールに入った。
そして約4年間、英語力とビジネスについて学んだという。しかし通常は西海岸かあるいはニューヨークのある東海岸あたりを留学先に選ぶケースが多いが、何故マイアミなのかと思っていると
「大都市は余り好きではないのです。マイアミは年中暖かいし、綺麗なビーチもある。それでいてそんなに騒がしくない環境が気に入ったんです」
この時期、ひと足先に兄のHhantさんも西海岸の大学に留学していた。どおりでこの兄弟の英語力はネイティブに近いと感じたわけである。ちみに兄はLA で建築設計を学び、欧米ナイズされた感性を磨き、今回の「davana Residence」に生かしたそうだ。確かにエントランス部分を見ると、南欧の住宅のようなモダンながら開放感ある雰囲気が感じられる。
大変辛辣な言い方をさせていただくと、お会いする前は、「お金持ち一家の道楽か」と秘かに思っていたが、この高級コンドは、ミャンマー人が建設、設計、内装、排水設備などを総合的に、そして欧米の住居感覚で建てた初のコンドミニアムと言ってよいだろう。
最終的に4棟構成になるが、現在1棟(14
戸)が賃貸稼働中で、外国の大使館員も入居しているという。
敷地内は適度に植樹され、ゆったりとした感覚で4棟が配置されるが、中央建物の共用施設の屋上に、デザインに凝ったプール&テラスエリアが設けられ、ここでのんびりしていると、とてもヤンゴンとは思えなくなる。 最後になるが、現在の閉塞し、先の見えない社会状況に苦しむ多くの市民や外国の在住者の事を考えると、この兄妹の話はまるで別次元のように見えるかもしれない。かくいう私もそうだが、もちろんだからといってこの兄妹を非難したり、批判する気は毛頭ない。
生まれた星は宿命である。これはどうにもならないことが多い。この兄弟にしても、現在の状況は、今は、余り大きな問題ではないのかも知れない。彼らは、ご自分たちが学んだ知識や体験を生かして、居住性と美的感覚を融合させた快適な住宅づくりに没頭しているようにも見えた。私は、これは彼らの作品なのかもしれぬと、ふと、思った。