23/10/2025
◇◇◇2025年11月発売の雑誌◇◇◇
https://www.yokendo.com/all-magazines/
弊社では、毎月1日に「農業および園芸」「機械の研究」を発刊しております。いずれも創刊から半世紀を超えて、最新、最先端の内容をお伝えしております。弊社サイトより是非お求めください。
〇農業および園芸
https://www.yokendo.com/all-magazines/nouen/
◆巻頭記事◆
清酒原料米の酒造適性予測
清酒は、原料に米と水を用いて造られる日本の伝統的なお酒である。原料の米は国産で、醸造用品種および食用うるち米品種が用いられる。統計資料から計算すると、清酒醸造に使用される米の量は、国内で収穫される水稲の約2.7%に相当する。
清酒原料米は、香味の調和を図るため、ご飯で食べるときに比べて高度に精米される(玄米を外側から削られる)。精米の程度は、ご飯では米粒の外側から8%~10%が削られるのに対し、清酒醸造(令和5酒造年度全体平均)では外側から38.6%(100%-38.6%=精米歩合61.4%)が削られる。精米の程度によって清酒の香味が大きく変わるため、濃醇タイプの清酒にはあまり削らない米が、香り高く軽快なタイプには大きく削った米が使われる。原料米からできる清酒の数量は統計資料から計算すると、アルコール度数15%の清酒は玄米1kgから全体平均値では約2.1Lできるが、米を大きく削る純米吟醸酒では約1.1Lしかできない。このように、原料米の経費が製造コストの大半を占めている。そのため、品質を保ちつつ原料米の利用率を上げることが重要である。
製造工程で重視されるものの1つが、原料米の溶解性(≒米の分解・消化のされやすさ)に関する酒造適性である。仕込前に溶解性を把握できれば、溶解性に応じた製造工程の管理が可能になり目標の酒質への誘導が容易になる。そのため、原料米の溶解性に関する酒造適性を簡易に把握する方法の開発が進められてきた。
本稿では、気象データからの原料米の酒造適性予測についての研究成果を紹介する。まず、原料米の溶解性や清酒香気成分に及ぼすデンプン構造およびイネ登熟期の気象条件の影響を述べ、つぎに気象データからの原料米の溶解性に関する酒造適性予測について述べる。
独立行政法人酒類総合研究所
奥田将生
〇機械の研究
https://www.yokendo.com/all-magazines/kiken/
◆巻頭記事◆
金属3Dプリントでの結晶成長のフェーズフィールドシミュレーション
金属AMでは、PBFプロセスがもっとも普及している。PBFプロセスでは、造形ステージに金属粉末を敷き、3次元CADデータをもとにした2次元スライスデータに沿って熱源を選択的に照射し、金属粉末を溶融・凝固させる。その後、造形ステージを降下させ、再び粉末床を作成して熱源を選択的に照射するという一連のプロセスを繰り返すことで、3次元造形体が造形される。金属のPBFでは、熱源として主に電子ビーム(EB)またはレーザービーム(LB)が用いられる。EBを用いたPBFは、ISOでは「PBF-EB」、一般的には「電子ビーム積層造形」または「Electron Beam Melting(EBM)」とよばれ、LBを用いたPBFは「PBF-LB」または「レーザー積層造形」や「Selective Laser Melting(SLM)」などとよばれる。最近では、単に3D部材を造形するだけでなく、材料の微細組織制御のための研究が盛んにおこなわれている。
PBFプロセスでは、熱源照射によって局所的な溶融・凝固が生じる。この急冷凝固を数値熱流体力学(CFD)によって再現し、温度分布の時間的変化から冷却速度を評価した。その結果、溶融池内の各領域で 106 K/s 程度の高い冷却速度条件下で組織形成が起こっていることが推定された。このような急冷かつ超大な温度勾配条件下では、優先成長方位である[100]方位が熱流方向と平行な方向に配向したデンドライト成長が起こり、その結晶成長方向は熱源スキャンストラテジーによって制御できる。例えば、レーザースキャンの向きを積層ごとに90°ずつ回転させながら造形すると、特定の方向にのみ結晶成長を促すことができ、単結晶材料の育成が可能になる。
大阪大学 大学院工学研究科 マテリアル生産科学専攻 助教
大阪大学 大学院工学研究科附属異方性カスタム設計・AM 研究開発センター
奥川将行
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