24/12/2025
【新刊のご案内】
『世紀末イースト・エンドとスラム小説――ヴィクトリア朝ロンドンにおける貧困の表象』(田中孝信・著、四六判上製、本体3800円+税)
中流階級のスラムへの眼差し──嫌悪、好奇、憐れみ、恐怖、不安、救済、そして魅惑
長きにわたり、シティの負の側面を担ってきたロンドンのイースト・エンドは、とくに19世紀末〜20世紀初頭にかけて、都市の貧困を象徴するスラムであった。 スラム見学に訪れる人びと、貧困撲滅に取り組むジャーナリストや社会改良家、慈善活動に従事する中流階級の女性たち、貧民救済に身を投じる社会活動家──さまざまな人びとを惹きつけ続けたイースト・エンドは、いかにして「スラム小説」という文学的表象として立ち現われたのか。ウォルター・ベサントからギッシング、ディケンズ、ジャック・ロンドン、トマス・バーク等、世紀末イースト・エンドを舞台にした「スラム小説」を、当時の社会背景と照らし合わせて分析し、労働者階級・貧民に対する複雑な心的態度を解き明かす。詳細な関連年表付。
[目次]
序章 いざイースト・エンドへ!
第1章 ウォルター・ベサント『あらゆる種類と階級の人びと』
──文化的慈善活動と語りの戦略
第2章 ジョージ・ギッシング『地獄』
──女性の身体表象に見る労働者階級観
第3章 アーサー・モリソン『ジェイゴーの子ども』
──最下層民と極貧民に対する作者の距離
第4章 チャールズ・ディケンズ『荒涼館』
──スラム、汚穢、そしてエスター
第5章 マーガレット・ハークネスのイースト・エンド三部作
──母性愛と女性の連帯
第6章 慈善活動に駆り立てられる淑女たち
──男性支配からの解放
第7章 博愛か偽善か?
──貧しい子どもたちへの眼差し
第8章 ジャック・ロンドン『どん底の人びと』
──貧しい男たちの身体表象
第9章 トマス・バーク『ライムハウスの夜』
──「オリエンタルなロンドン」の誘惑
終章 イースト・エンドへの止むことなき関心
[著者紹介]田中孝信(たなか・たかのぶ)
大阪公立大学大学院文学研究科特任教授、大阪公立大学名誉教授。著書に『ディケンズのジェンダー観の変遷──中心と周縁とのせめぎ合い』(音羽書房鶴見書店、2006年)、Dickens in Japan: Bicentenary Essays(共著、大阪教育図書、2013年)、『ヴィクトリア朝の都市化と放浪者たち』(共編著、音羽書房鶴見書店、2013年)、『セクシュアリティとヴィクトリア朝文化』(共編著、彩流社、2016年)等が、訳書にリチャード・D・オールティック『ヴィクトリア朝の人と思想』(共訳、音羽書房鶴見書店、1998年)、ディケンズ『ハード・タイムズ』(共訳、英宝社、2000年)等がある。