14/12/2025
【『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』】
今宵、ついに『べらぼう』が最終回を迎えました。
その幕引きは、まさに「べらぼう」らしい、涙と笑いに溢れた大団円でした。
森下佳子先生の卓越した脚本のもと、蔦屋重三郎という稀有で難しい人物を一年間にわたって生き切った横浜流星さん。
笑いも、怒りも、哀しみも、そして夢も―…そのすべてを見届けさせていただきました。
心からの感謝を込めて、本当にありがとうございました。
さて、最終回のべらぼうな見どころは…。
☆べらぼうな見どころ・その1|雷による「天の裁き」
刃も毒も使わず、雷によって命を落とす一橋治済(演:生田斗真)。
誰かが手を下せば、必ず血は残る――。
だからこそ、すべてを「天の意思」に委ねたこの結末は、時代劇の王道でありながら、どこか新鮮でした。
この計画に関わった者たちが、誰ひとりとして直接手を汚さずに済んだこと。
それ自体が、治済という存在の業の深さを物語っていたようにも思えます。
そして、治済の最期の場に現れた、源内を思わせる髷の男。
顔は映らず、正体も明かされない。
夢か現(うつつ)か、幻か真か――。
答えを示さず、見る者に委ねるこの演出こそ、『べらぼう』らしい幕引きだったのではないでしょうか。
☆べらぼうな見どころ・その2|斎藤十郎兵衛が、最後の「写楽」
これまで物語は、「写楽=絵師集団」という大胆な解釈で進んできました。
ところが最終回、写楽絵の大首に向き合う斎藤十郎兵衛(演:生田斗真)の姿によって、物語はそっと「写楽=斎藤十郎兵衛」へと軌道修正されます。
これまでの描写を否定するものでも、強引な反転でもなく、「集団による写楽」と「一人の写楽」を、両立させる語り口。
写楽研究の長年の議論そのものを、物語の内部に取り込んだかのような流れに、思わず唸らされました。
☆べらぼうな見どころ・その3|べらぼうな最期のとき
蔦重の最期の床には、北尾政演(演:古川雄大)、喜多川歌麿(演:染谷将太)、鶴屋(演:風間俊介)、駿河屋(演:高橋克己)……
戯作者、絵師、本屋、そして吉原の人々が、大勢集まりました。これだけ大勢の仲間に囲まれて最期を迎える、大河ドラマの主人公も珍しいのではないでしょうか。
涙に沈むのではなく、蔦重を呼び戻そうと始まる「屁踊り」。
うるさすぎて「拍子木の音が聞こえねぇ」という一言に、思わず笑ってしまいました。
生も死も、悲しみさえも笑いに変えてしまう――それこそが蔦重のまいた種だったのでしょう。
しんみりさせず、騒がしく、洒落っ気たっぷりに幕を引く。
これ以上ないほど「べらぼう」らしい、粋で愛おしい最期の場面でした。
【べらぼう 満喫リポート】では、『初めての大河ドラマ べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』編集者と月刊『サライ』ライターが、最終回についてより深く解説しています。
記事はこちらからどうぞ
https://serai.jp/hobby/1249777
あわせて、「本居宣長」についての解説記事もどうぞ!
本居宣長:https://serai.jp/hobby/1247821
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ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)最終回では、阿波徳島に移送される途中の一橋治済(演・生田斗真)が雷に打たれて亡くなるという展開になりました。 編集者A(以下A).....