
19/07/2025
なつはづきさんの第二句集『人魚のころ』が刊行となり、
発売早々、Amazonの句集部門でも上位に。
早くも話題を呼んでいます。
第一句集『ぴったりの箱』から5年。
現代俳句新人賞や攝津幸彦記念賞などを受賞し、
いま俳壇で注目される著者が、
日常のなかにふと立ち上がる気配や感情を
丁寧に掬い取った280句を収録。
なつさん特有の身体感覚はそのままに、
表現は一層しなやかに、自在に。
『人魚のころ』より何句かご紹介します。
切手貼るさっき小鳥がいた場所に
寒晴やピノキオは木に戻りたい
シングルマザー銃のようなる葱提げて
絶叫のような吸い殻幸彦忌
ドッジボールずどんとバレンタインの日
かぶと虫かさりと父の戻る夜
鉄屑になるまで鉄でいる穀雨
髪洗う人魚の頃を思い出す
心から遠い指先あすは雪
八十八夜少し透けたくなる体
高野ムツオさんによる帯文には、
Eテレ「NHK俳句」の句会で全員の特選となった
〈蛇いちご母をまっすぐ見られぬ日〉の一句も。
「蛇苺」はその妖しげな名と鮮烈な赤の印象から、
禁断の異界を想像させる季語として使われること
が多い。しかし掲句の蛇苺は、心の奥底を反映して
くれる無垢できれいな深紅の実だ。季語「蛇苺」が
生まれ変わった瞬間である。なつはづきの自在な
発想力のたまもの。(高野ムツオ)
「難解さと平易さをうまくつないでいるところ」に
なつはづきの魅力があると語るのは、筑紫磐井さん。
本書に栞文「じつは、はなつづき」をご寄稿いただきました。
装丁は奥村靫正&星野絢香(TSTJ)、
装画はYoko Yoshiokaさん。
人魚がそっと潜む、美しく遊び心のある装丁も魅力です。
「上手い俳句よりも届く俳句が作りたい」というなつさんの
思いが込められた一冊を、ぜひお手にとってみてください。
句集『人魚のころ』
【朔出版】https://saku-pub.com/books/ningyo.html
【Amazon】https://www.amazon.co.jp/gp/product/4911090324