06/12/2025
理容文化の内部に、髪を整えることの他に肌の呼吸を取り戻させることに重心を置いたような、声高には語られない系譜の技術を施してくれる歴史は多分ない。
その系譜をフレッシュかつ丁寧に深めている店が、山形県の東根に存在している。
現代では、ケアという言葉がどこか商業的な光沢を帯び、
即効性や“わかりやすい効果”を求められがちだ。
だが、この理容室のフェイシャルには、それとは別の時間の流れがある。
店主自身が“ケアされる心地よさ”を深く知っており、施術を受ける事が好きな方にしか辿り着けない種類のリズムが、静かに積み重なっている。
この国のサービス産業が長く抱えてきた、“効率化”と“丁寧さ”のすれ違いを考えることがある。
ここでは逆に、時間をかけることが価値であり、誠実な態度として守られている。
価格は驚くほど控えめなのに、その技術は誰に見せるでもなく、誇り高く磨かれている。
飾らない職人気質こそ、地域の生活文化を支えてきた
“影のインフラ”なのではないかと思う瞬間がある。
施術後に鏡を見ると、肌が光っている以上に、気持ちまが軽くなる。
技術だけでなく、他者の熱意に触れたことへの反射のようにも思える。
こうした場所がまだ街に残っていることを、その丁寧さに預かれることを、深く感謝している。