週刊NY生活 デジタル版

10/15/2025

今週のデジタル版を読む

(1)海外留学生が米国で激減 日本人は米国回避

(2)かぼちゃ狩りスポット紹介

(3)カヌーでひと回りマンハッタン 航海体験記

(4)山田雅人かたりの世界 松井秀喜姉弟物語

(5)週刊やさしいにほんご生活

(6)NY総領事 片平聡大使が着任

(7)NY日本人学校同窓会 東京で開催

(8)日本社会の駆け込み寺 JASSIを支援

(9)人気アニメ「Spooliz」 NYコミコンで新作発表

(10)意外なほめ言葉 ニューヨークの魔法

10/15/2025

新学期前の8月統計

 連邦政府のデータによると、米国の大学の新学期直前の8月、米国に到着した留学生の数は約20%減少した。この減少は6月と7月の小幅な落ち込みに続くものだが、8月は通常、留学生の到着数が最も多くなる時期。今年は31万3138人の学生が留学ビザで到着した。昨年、米国には約110万人の留学生が在籍し、授業料収入に依存する大学にとって重要な収益基盤を形成していた。連邦政府の財政援助の対象外であるため、留学生の大半は全額を自己負担しており、多くの教育機関にとって重要な収入源となっている。

 背景にはビザ遅延と渡航禁止令がある。今年度からの留学を計画していた多くの学生がビザ取得の障害に直面した。5月下旬、国務省は留学生向けビザ面接の予約受付を一時停止。6月に発表された渡航禁止令はさらなる不確実性を加えた。この禁止令は19か国を対象とし、その大半はアフリカ、アジア、中東の国々だった。これにより、アフリカからの到着者数が 33%減、 中東からの到着者数が17%減、アジアからの到着者数が 24%減となり 米国への留学生最大供給源であるインドからは45%減となった。米国における全外国人留学生の約7割がアジア系で占めており、アジア系全体では24%の減少となった。3人に1人がインド系、5人に1人が中国系となる人種構成になっている。

 日本の海外留学協議会(JAOS)の調査で今年の統計記録はまだ発表されていないが、2024年の日本人留学生数(JAOS加盟の留学事業者ベース)は、前年から 4246人増の7万253人と、コロナ前(2019年)比で約 90 %まで回復。ただし、そのうち米国への留学は、前年比で約2000人減少 しており、留学先ランキングでも米国は1位から2位に後退している。

 海外へ行く日本人留学生自体の数自体は増えているため、留学先として米国を敬遠する傾向が出ているものと見られる。

 今後の見通しとして専門家は、留学生数の持続的減少が米国の科学技術分野における競争力を低下させると指摘する。理系博士号取得者の約4分の3は卒業後も国内に留まり就業しており、米国の博士号取得科学技術者の40%超が国外出身者だ。新たに導入されたH1B就労ビザの10万ドル申請料は、STEM分野人材の流入をさらに減少させる見込みだ。

10/15/2025

■クイーンズ

クイーンズカウンティーファーム博物館。入場無料。かぼちゃ狩りはサイズで課金。ヘイライド、新鮮な野菜や花も販売するファームスタンド。1772年に作られた歴史的ファームハウスの無料ツアーもある。

Queens County Farm Museum

73-50 Little Neck Pkwy

Floral Park, NY

Tel:718-347-3276

www.queensfarm.org

■ロングアイランド

ホワイトポスト動物農園。有料。かぼちゃ狩りはサイズで課金。鳥のショー、小馬のポニーライド、トレインライドなどお楽しみがいっぱい。ロングアイランドの人気スポット。週末は秋祭りも開催。

White Post Animal Farm

250 Old Country Rd

Melville, NY

Tel: 631-351-9373

www.whitepostfarms.com

■コネチカット

シルバーマンズ農園。入場無料。かぼちゃ狩りはサイズで課金。アニマルファームやバンジョーやギターの演奏が楽しめる。かぼちゃの重さを2オンス以内で当てたら、そのかぼちゃがもらえる。1920年創業。ニューイングランド風の飾り付けも必見。

Silverman’s Farm

451 Sport Hill Rd, Easton CT

Tel:203-261-3306

www.silvermansfarm.com

■ウエストチェスター=写真=

ウエストチェスター・グリーンハウス。ハーツデールアベニューをエルムスフォード方面に進むと、左側に色鮮やかな鉢植えが並ぶ店が見えてくる。今の季節は様々な秋の花とカボチャが目を楽しませてくれる。店内には野菜と果物、ジャム類とベーカリーの品々が並ぶ。とびっきり新鮮なレタス類がおすすめ。

Westchester Greenhouse & Farm

332 W. Hartsdale Ave.

10/15/2025

秋晴れの9月20日土曜日の朝8時30分、ブルックリン区グリーンポイントから7人乗り大型カヌー2隻、総勢14名の老若男女がイーストリバーから出航。いよいよ9時間に及ぶ「楽しさと不安」が入り混じった航海がスタートした。

 我が艇のキャプテンはマイケル。彼は船尾でカヌーを操る最も重要なポジション。クルーは他男性3人、女性3人の経験豊かな漕ぎ手の面々。

 今回、上級者ばかりのクルーの中で何故初心者(今年人生初めてカヌー、カヤックに挑戦)の私が幸運にもメンバーに選ばれたのか?

 キャプテンのマイケル曰く、「チャレンジ精神が旺盛でその熱意が伝わった」、「一番最初にツアー参加に応募した事」が評価されたとの事。

 因みにクルー最年長はカナダ生まれのハイジー(名前は可愛いが、実は孫が3人のお婆ちゃん)。少女時代からカヌーに親しみ「体力の衰えは技術でカバー」と鼻歌交じりで艪を漕ぐ姿は正に「柔よく剛を制す」そのもの。かたや「根性と気力」が売りの元体育会部員の私とは正反対。

 コースはイーストリバーを北上、マンハッタン島最北端のインウッドを通過後、ハドソンリバーを南下し、そしてコース最難関マンハッタン最南端へ。潮の流れが速く、各種大型フェリーの往来が激しい正に交通の難所。「自由の女神」を見る暇もなく、全員で掛け声に合わせて必死に漕ぎ続け無事通過。その後、ブルックリン橋の下からはカヌーは潮の流れに上手く乗り、最後はリラックスして無事ゴール。下船後、皆でツアー成功を祝ったビールの味は最高!格別でした。「乾杯!!」

 今年5月に就任したNYジャパニーズレストラン協会の会長職。新米会長は今回の挑戦で「皆をまとめる強いリーダーシップとチームワークの大切さ」、「物事に正面から向き合う強い意志と冷静沈着さ」を改めて学びました。今回の貴重な経験をこれから協会運営に是非生かすべく舵取りに頑張ります。(木下直樹 NYJRA(NYジャパニーズレストラン協会)会長)

▽インフォメーション詳細

North Brooklyn Community Boathouse

http://northbrooklynboatclub.org

10/15/2025

日本クラブで熱弁

 俳優・タレントである山田雅人氏による「かたりの世界」が10日夕、日本クラブで開催され、50人余りの参加者が「松井秀喜師弟物語」と題した表現力で涙あり笑いありのストーリーに聞き入った。スポーツ選手や文化人などの伝記を徹底した取材と独特の語り口で組み立てる、「かたりの世界」は、実話に基づく独自の話芸で、マイク一本とスポットライトの演出で、『隠れた人間ドラマの感動』を伝えることで定評がある。この「かたりの世界」はイベントのみならず企業研修やセミナーでも行っている。

 「ブンでなくてビュン」長嶋監督が松井に教えたのはこの一点の言葉で象徴される。松井秀喜は1974年6月12日に石川県で生まれ、小学校2年生の時に4歳年上の兄と畑でキャッチボールしたのが野球との出会いだった。甲子園で5打席5敬遠を受けた選手は後にも先にも松井だけ。長嶋監督が自宅にやってきて「私がなれなかったジョー・ディマジオに君はなりなさい」と巨人入団を勧め、松井はそれに一つだけ条件をつけた。「僕のニックネームはなぜかゴジラなんです。ホームランを打てば『ゴジラ吠える』って見出しに書かれる。それが嫌なのでもし、自分にゴジラ以外のニックネームをつけてくれるなら受けます」と返事した。長嶋は「オーケー、いいよー」と返事をして松井は晴れて入団、グラウンドに出た時に長嶋が「頑張れゴリラ!」と叫んだ。松井は長嶋に「ゴジラのままでいいです」と言ったそうだ。日米通算507本のホームラン記録をもつ松井。その姿を見て育ったのが大谷翔平だ。長嶋がいなければ松井は生まれず、松井がいなければ大谷はいなかった。松井を育てたのは長嶋。そこには偉大なる師弟愛があった、そんなエピソードの数々を1時間熱く語った。

 山田さんは講演の後「初めての海外、ニューヨーク講演で緊張しましたけど、お客さんが食い入るように見てくれて嬉しかったです。NY講演なので松井選手をテーマにしました。松井選手は憧れなので、なぜ彼が海を渡ったのか、今回少し分かったような気持ちになりました。昨日ヤンキースタジアムにも行ってその門構えも見て、ここがジョー・ディマジオがプレーしたところかと感無量でした。これを機会にこれからも海外での講演をしてみたいですね。無限の可能性のあった講演会でした。人は出会いが大切ということを師弟愛の話でお伝えしたかったです」と話した

10/15/2025

この連載は、日本語を勉強している人を読者対象としたコーナーです。日本文化やマナー、タイムリーな日本に関する話題などを簡単な日本語で毎月第3週号に掲載します。アメリカ人の友人などにご案内ください。また、漢字をまだ習っていないお子様にとっても社会を知り、漢字に接するよい機会になります。

温泉のマナー

 日本の温泉には、マナーを守って楽しむ文化があります。入る前には体をよく洗います。タオルを湯船に入れるのはマナー違反とされています。温泉には静かに入りリラックスします。泳いだり、騒ぐのは控えましょう。また、皆で入る大浴場では大きな入れ墨が禁止のところが多いので注意しましょう。小さなものはシールなどで隠して入るのがマナー。プライベートなタイプの温泉のある宿では問題ありません。新しい源泉のお湯が常に注がれている「かけ流し」というスタイルや、露天風呂で四季折々の景色を眺めながら入る屋外の温泉も人気です。(長久保美奈、マナー講師)

わくわくことわざ(14)文とイラスト 平田恵子

とらぬ狸の皮算用

 先行きが不明なものに期待をして、さまざまな計画をたてることの例え。早とちりへの戒めです。「算用」は、金額を数える、計算するの意味。狩人がまだ捕えていない狸の毛皮の儲けを勝手に考えて、思い描く様子が元になっています。「宝くじを買っただけで、来年は日本の世界遺産25カ所を全部訪ねるなんて、とらぬ狸の皮算用だよ」などと使います。狸の毛皮は、昔は防寒用として高額で売買されていました。毛は、現在でも習字用の筆の材料に使われています。

《言葉の意味(ことばのいみ)》

・温泉 hot spring

・マナー違反 bad manners

・〜するのを控える refrain from 〜ing

・大浴場 public bath

・入れ墨 tatoo

・掛け流し free-flowing (hot spring)

・露天風呂 open air bath

・たぬき: tanuki(Raccoon dog)

・早とちり:haya-tochiri (jump to conclusions)

・皮 :kawa (leather,far)

・宝くじ :takara-kuji (lottery) 

・世界遺産 :sekai-isan (world

10/15/2025

森美樹夫ニューヨーク前総領事・大使が10日帰国し、後任の大使に片平聡(かたひら・さとし)前外務省経済局長が着任した。

 片平大使は1968年9月15日生まれ、1991年外務公務員採用1種試験合格。92年東京大学法学部第二類卒業、同年4月外務省入省。2009年内閣法制局参事官、2012年ブラジル日本大使館参事官、14年経済局国際経済課長、17年国際法局経済条約課長、19年在英国日本大使館公使、22年大臣官房参事官兼総合外交政策局、国際法局、23年経済局長。着任に当たり「管轄地域の在留邦人が安全に安心して暮らせるよう全力を尽くし、さまざまな要望を踏まえ、適切に行政サービスを提供したい。日系企業の活動を積極的に後押しし、日米間の経済交流を促進したい。日米の長い歴史を通じて育まれた人と人との絆を更に深め、日本の魅力や日本文化を積極的に発信し、重層的な日米関係を構築したい」としている。静岡県出身。57歳。

10/15/2025

先月9月2日に開校50周年の記念式典が行われたニューヨーク日本人学校の同窓会が10月11日、東京のグレードパーク新宿西口で開催された。 久しぶりの同窓会ということもあり、周知が難しかったが、本紙・週刊NY生活の紙面で呼びかけたところ、順調に参加者が増え、当日は先生方18人を含む120人の同窓生が集まった。

 会は第12代(2007年〜2011年)校長の三井知之同窓会会長の挨拶から始まった。会長からはニューヨーク日本人学校の移転の経緯などが伝えられた。現在までの卒業生は 初等部2214名、中等部1770名、総計3984名だが、保護者の赴任期間により、途中で転校する子も多いため、実際には大変多くの同窓生が共に学び、現在も活躍されていることなどが話された。

左から早津氏、三井氏、綿引氏

 続いて、来賓の公益財団法人、海外子女教育振興財団の綿引宏行理事長が祝辞を述べた。綿引理事長はニューヨーク日本人教育審議会(JEI)副会長の経験もあることから、ニューヨーク日本人学校と同窓生に熱いエールを送った。

 同じく来賓の今年度同様に50周年を迎えた、こどものくに幼稚園前園長の早津邑子さんは「卒園生がニューヨーク日本人学校にもお世話になり、その子供たちも世界に羽ばたいています」と喜びを語った。 来賓挨拶の後、同窓会事務局の八重澤先生の音頭で乾杯が行われた。

 会場のスクリーンにはニューヨーク日本人学校第18代の森本恵作現校長から同窓会へのお祝いビデオメッセージや、50周年の記念ビデオ、リバーサイド新校舎の学校紹介ビデオが流された。ビデオの中には、開校当時からの懐かしい映像もあり、会場からは歓声が上がっていた。

 その後、参加した先生方の一言メッセージが行われたあと、恒例の日本人学校校歌の斉唱が元気よく行われた。米国社会科の岡本幹子先生の中締めでは、米国国歌斉唱となり、会場が大いに盛り上がった。最後に参加者全員による記念撮影が行われ、次回の再会を約束して同窓会はお開きとなった。同窓会事務局の八重澤、上野、川勝氏は同窓会名簿の拡充を図るため、今後も登録を呼びかけている。

同窓会登録フォームはこちらhttps://docs.google.com/forms/d/1lVE8vxBWWrslfyLCNPpMpPZJUhAGIOJhspDXkGewyBo/preview

10/15/2025

企業や個人115人ベネフィット晩さん会企業や個人115人ベネフィット

 ニューヨークの日系社会で駆け込み寺として知られる日米ソーシャルサービス(JASSI)の第44回ベネフィット晩餐会がイエールクラブで開催され、115人が参加した。同団体はニューヨークで、言語や文化の違いから支援を必要としている人へ無料で福祉サービスを提供している非営利団体で、生活に困り果てた時の最後のセーフティーネット、駆け込み寺として機能し、来年は45周年を迎える。

(写真上)地域リーダーシップアワードを望月理事長(右端)から受ける鈴木氏(中央)

 昨年7月から今年6月までに1317人に対して計8586件のコンタクトをして電話、メール、対面でのサービスを提供した。当日はビデオで認知症の日系高齢女性がNY地下鉄構内で警察に保護されたケースで、JASSIの介入により日本の妹と連絡が取れて帰国し、高齢者施設に無事入ることができた事例が紹介された。

 晩餐会翌日に離任するニューヨーク総領事の森美樹夫大使が、間瀬博幸首席領事の代読により感謝の言葉を伝えた。理事長の望月良子さんは、日系社会の日頃の支援に感謝の言葉を述べると同時にJASSIの現在の8割以上の基金がニューヨーク州およびニューヨーク市からの助成金で成り立っている現状を説明し、現在の政治情勢からニューヨーク州、ニューヨーク市への連邦政府からの予算削減により、今後州や市からJASSIへの助成金が減ることが予想されるとし、企業や個人からの献金がさらに重要になる」と述べた。また、本紙に「今後財務上厳しくなっていくと思うが、何があってもセーフティーネットとしての役割を果たすためにホットラインのサービスは守り抜くつもり」と話した。今年の地域リーダーシップアワードは、JASSIの広報誌を最大時4000部の印刷と発送の資金を提供してきたKPMGに贈られ、元パートナーの鈴木康三さんに望月理事長から感謝の盾が贈呈された。当日の参加者は、ラッフルや、ゲストのニューヨークで活躍する日本人ジャズトリオJazz Triangle 65-77の演奏を楽しんだ。 演奏は、深沢晴奈 (フルート)、山本章弘 (ベース)、’金澤悠人

10/15/2025

ソニー・ミュージックレーベルズ

 ソニー・ミュージックレーベルズ(本社東京都)が今年度から権利を取得して展開するオリジナルアニメーション「Spookiz」がニューヨークで開催されたコミコンに初出展した。同アニメは言葉を持たない人気短編動画シリーズで、世界中の幅広い世代に楽しまれており、このほどソニー・ミュージックレーベルズが全権利を取得して日本を舞台とした新作を5年ぶりに発表した。新シーズンが今月中旬に公開予定になるのに合わせ、アニメファンが一堂に集まる同コミックの祭典でアピールした。会場1階メインフロアの真ん中で、家族連れや子供たちが足を止め、ブースで限定アクリルキーチェーンやステッカーをもらったり、デジタルアイテムを配布してもらってARを体験して楽しんだ。コスプレの来場者もスタッフと記念写真を撮るなどした=写真=。

 同社の企画戦略本部プロデューサーの平原麻美さんは「この作品は、海外、特に英語圏で人気があるので、どんどんアメリカのイベントに出展して認知と人気を確実なものにして広げていきたい」と話す。今月17日からプロローグがスタートし、ハロウィンの31日に全世界リリースとなる。今回の出展は、ソニー銀行の協力も得てグループ全体で同作品の売り込みに意欲を見せた格好だ。

10/15/2025

I love your coat.

 あなたのコート、すてきね。

 I love your bag.

 そのバッグ、いいわね。

 見知らぬ人に、服装や身につけている物をほめられることは、ニューヨークではよくある。

 ある日、美しい女の人とエレベーターで乗り合わせた。ほかに誰もいなかった。インド系だろうか。特有の輝く大きな瞳に、きりりとした口元が印象的だった。胸を張り、背筋をぴんと伸ばして立っていた。

 どちらからともなく、笑みを交わした。その人は私を見つめていたかと思うと、突然、こう言った。

 I love your eyes.

 あなたの目、とてもすてきね。

 耳を疑った。私が自分の顔で何よりも好きになれないのは、このひと重の目だった。

 日本では子どもの頃、笑うと目がなくなる、とからかわれた。手でまぶたを持ち上げてふた重を作り、セロテープを貼って押さえ、このまま取れませんように、と何度、祈ったことか。

 二十年ほど前、チャイナタウンの写真館でポートレートを撮ったとき、一生懸命に目を大きく開けていたのに、ほら、ちゃんと目を開けて、と何度も言われ、悲しくなりながらも吹き出してしまった。目の大きなアメリカ人に言われるならともかく、その中国人カメラマンの目だって、私とそんなに変わらないのに……。

 目の前の女の人は、誰が見ても大きな瞳の持ち主だ。

 アメリカ人のほめ言葉には素直にお礼を言う私も、このときばかりは、ノー! と強い口調で否定し、恥ずかしくて顔を伏せた。

 イエス!

 女の人は私に負けない強い口調で、毅然として言い返した。

 とても深い、知的な目だわ。

 その顔があまりに真剣だったから、ありがとう、という言葉が自然に出た。

 部屋に戻ると、そのままバスルームに向かった。

 鏡の前に立った。

 さっきの女の人の言葉を思い出し、ほほ笑んだ自分の目を見て、私もふとそんな気持ちになった。

 I like my eyes. Thank you.

 私の目も、捨てたものではないかも。ありがとう。

 このエッセイは、文春文庫「ニューヨークの魔法」シリーズ第3弾『ニューヨークの魔法のことば』に収録されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

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